老人と海 レビュー

こんにちは、アセクシュアル書店員、白瀬誠です。

今回は、7月に新潮社から文庫が出版された、ヘミングウェイ老人と海をレビューさせていただきます。

 

 

 

老人と海

ヘミングウェイ(高見浩訳)

 

八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだがー。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学書をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。

 

おすすめ度:100点

 

おすすめポイント

私が務めている書店では、

入荷して間も無く、店頭から姿を消したこの文庫。

(うち一冊は私が購入してます笑)

 

2020年7月1日、

新潮文庫から出版された『老人と海』は、

1952年に発表され、後にノーベル文学賞を受賞した作品です。

本のカバーや紙質は、どこか荒々しく年季を感じさせます。

どことなく、漁師の男らしい精神を表しているようです。

 

「漁師は老いていた」から始まる本作は、

年老いたとある漁師の、3日間にもわたる死闘が描かれます。

最も魅力的なのは、著者の経験に基づいた漁の描写です。

海なし県出身の私ですが、漁師の行動の全てを鮮明に思い描くことができ、

読書後にはまるで今まで漁師として生きて来たかのような、

海への懐かしさや恋しさを感じてしまいました。

 

老漁師は、

時に両の手のひらを擦り切り、

時に左手が引き攣り硬直し、

時に舳先に押し付けられながら、

命をすり減らしながら巨大カジキを仕留めようとします。

その姿からは、人間の命の小さく、しかし力強い輝きを感じることができます。

 

「あの子がいてくれたら」

漁師は、カジキとの死闘の中で、

幾度か仲の良い少年の存在を切望します。

それは少年も同様です。

老人を慕う少年は、老人の船に乗り共に漁へ出かけることを望みます。

特に物語の終盤、老人と少年の再開には、

涙が止まりませんでした。

人が人を想うことの美しさもまた、

この本から学ぶことができる要素の一つでしょう。

 

とても紹介しきれませんが、

こんなにも美しい文学は、生まれて初めて読んだ、

と、まだまだ短い人生しか生きていない白瀬は思うのでした。

 

あらすじ(ネタバレ)

この作品の素晴らしさは、文章の中にこそある、

と白瀬は思いますので、今回は遠慮なくネタバレします。

自衛はしっかりしてくださいね。

 

メキシコ湾流で漁をして生活している老人は、

八十四日間、一匹も魚が釣れずにいました。

老人の漁を手伝っていた少年の両親は、

少年に別の船に乗るように言います。

老人を慕う少年は、渋々他の船を手伝うようになるのですが、

それでも、毎朝老人を起こし、漁へ向かう姿を見送るのでした。

 

漁に出てしばらくして、老人は大物の気配を感じ取ります。

マグロのついた釣綱に食いつく巨大カジキ。

カジキはそのまま、綱を引っ張り老人を乗せた船ごと移動を始めてしまいます。

 

3日もかけてカジキを制した老人は、

体の不調を感じながらも、帰路を進みます。

しかし、船にくくりつけたカジキの亡骸を狙って、

次に現れたのは、サメでした。

 

カジキを喰われまいと抵抗する老人。

幾度となくやってくるサメの襲撃を迎え撃ちながら、

小さな港へ帰り着きます。

しかし、立派なカジキは、サメによってその大半を失われていたのでした。

 

帰って来た老人に気がつき涙する少年。

次は必ず老人の船に乗る、と約束してお話は終わります。